保険に加入して保障を買う場合、普通に考えれば、その保障が必要な期間を保険期間として加入するのが当たり前ですね。
たとえば子供が生まれたので子供が成人するまでの間に自分に万一の事があった時、まとまった学資や生活費を残してやりたいといった場合は、20年とか25年といった定期保険を使うことになるし、一生涯の保障として必ず家族に一定の金額を残してあげたいなら終身保険を使うと考えるのが普通ですね。
さて、ここでは頭を柔軟にして考えてみましょう
前述の例であなたの年令が30才とします。子供が独立するまでの一定の期間の保険を考えた場合、通常は20年とか25年とかの定期保険に加入しますが、あえて保険期間50年とかの定期保険に加入したらどうでしょうか?そして20年や25年が経過した時点でこの保険を解約するのです。どちらの方法も結果としては20年もしくは25年間の保障があったことに全く変わりはありません。
分かりやすく書いてみます・・・
最初の方法をAの方法とします。
もう1つの方法をBの方法とします。
定期保険の保険料は前セクション定期保険【基礎知識】で学習しましたように、保険期間を長くすれば満期の年令が高くなるので保険料は高くなります。20年よりも25年は高く、さらに50年ではぐっと高くなってしまいます。
20年しか保険が必要ないのに50年の保険に入るなんて、そんなの損じゃないかと思って当然です。
具体的に比較して見ましょう
保険金額2000万円で比較。Aは20年で期間満了します。Bは20年目で解約します。
保険料は月払い、保険料支払い期間はどちらも全期払いです。
加入 方法 |
加入する 定期保険の 保険期間 |
月払い 保険料 |
20年間で 支払う保険料 |
保険期間満了時 もしくは解約時の 受取額 |
20年間の同じ保障に 対する実質負担額 |
A |
期間20年 |
5,620円 |
1,348,800円 |
0円 |
1,348,800円 |
B |
期間50年 |
16,120円 |
3,868,800円 |
2,972,000円 |
896,800円 |
いかがでしょうか?Aの方は1,348,800円が掛け捨てとなりますが、Bの方は実質886,800円の掛け捨てで済みます。尚且つBの方は手元に貯蓄として2,972,000円戻ってきます。しかも20年間はしっかり2000万円の保障があります。
このような加入方法は一般の個人では余り聞く機会がないと思います。でも実際にこんな考え方で加入している方を見かけます。保険を熟知している人たちと言っていいと思います。
このBの方法を法人(会社)が使ったらどうでしょうか?
会社が契約者(保険料を負担)、従業員を被保険者にして加入します。
定年までの期間中に万一のことがあったら(労災など)従業員の遺族に死亡退職金として「保険金」を受け取ってもらいます。元気に定年を迎えたらこの保険を解約し「解約返戻金」を定年退職金の一部に充当します。・・・退職金を準備しながら万一の時の従業員への保障に備えられます。
企業にとってはとてもありがたい仕組みです。もともとは定期保険は掛け捨ての保険ですから保険料は損金計上できます。
待った!です。この様なうまい仕組みは国税当局もしっかり把握しています。したがって戻り率の高い保険になっていた場合は、損金計上が一部制限されることがあります。それでも充分メリットがあるため、多くの企業がこの仕組みを使っています。
法人は定期保険の使い方を熟知しています。
会社の総務担当者にとっては定期保険の活用は必須の業務知識となります。
もちろん個人でも活用できる方法です。
さらに、保険期間の長い定期保険は終身保険同様保険料の短期払いの制度が使えるようになります。(期間の短い定期保険でも短期払いが使える保険会社もあります)
前述の方法Bで短期払込を使ったらどうなるでしょうか?
保険金額2000万円で比較。Aは20年で期間満了します。Bは20年目で解約します。
保険料は月払い、保険料支払い期間はAが全期払い、Bは短期払い20年です。
加入 方法 |
加入する 定期保険の 保険期間 |
月払い 保険料 |
20年間で 支払う保険料 |
保険期間満了時 もしくは解約時の 受取額 |
20年間の同じ保障に 対する実質負担額 |
A |
期間20年 |
5,620円 |
1,348,800円 |
0円 |
1,348,800円 |
B |
期間50年 |
29,360円 |
7,046,400円 |
6,604,000円 |
442,400円 |
いかがでしょうか?興味深い結果といえます。
保険期間の設定と払い込み期間の設定を最適化すれば様々なパターンを設計できます。
ここまで加入方法のバリエーションを知ると、否が応でも保険のプロに相談せざるを得なくなります。インターネットでいくら調べても分からないからです。またこの様な加入方法をネットなどで通信販売する行為は法律で禁止されています。
まずはしっかりここで知識を身につけてから相談してください。
話を戻します。
保険期間100歳までの定期保険を100歳定期などといいます。保険会社によって95歳までとか、97歳までとか微妙に異なります。その保険会社で取り扱える最長の定期保険ですので、もちろんそこまでの期間であれば95歳まで、90歳までなど設定できます。仮に30歳で100歳までの定期保険に加入した場合、保険期間は70年間となります。このように保険期間の特に長いものを長期平準定期保険、超長期定期保険などとも言います。
※正確には法人税法上の定義がされていますが、この場では説明は必要ないと考えますので省略します。
【このFripでは次の点に注目して下さい】
SAMPLEとして保険金額1500万円の100歳満期の長期平準定期保険を使いました。
- 加入年令で保険料はどのくらい変わるのかを見てください。
(30歳で加入した場合と50歳で加入した場合の2パターン)
- 保険料払い込み期間を変えると保険料はどう変化するのかを見てください。
(30歳加入の場合・・保険料支払い期間50歳までと65才までと全期払いの3パターン)
(50歳加入の場合・・保険料支払い期間65歳までと全期払いの2パターン)
それぞれのパターンで保険料支払総額と解約返戻金の関係の変化を見てください。
- 保険料の支払い期間を延ばすと保険料は安くなりますが、保険料支払総額が保険金額1500万円を超えるケースがある事を見てください。
- 全期払いでは解約返戻金の額は保険料支払総額を越えることは無い事を見てください。
- 保険料を短期払い込みにすると解約返戻金の額が保険料支払総額を超える場合があることを見て下さい。
- どんな場合でも解約返戻金の額が保険金額(1500万円)以上になることは無いことを見てください。
- どんな場合でも解約返戻金の額は最終的に0になる事を見てください。
超長期の定期保険の特徴
一定期間経過するとまとまった解約返戻金があります。しかし一定期間を経過すると解約返戻金は減少して行き、最終的には0(ゼロ)となります。
保険料の短期払込が使えます。
短期払込を使うと解約返戻金は一定期間は支払った保険料総額を超えます。(Frip参照)
保険料自動振替貸付や払い済み保険への変更、契約者貸付制度など終身保険と同様に使えるようになります。
(これらの制度については取扱方法が保険会社によって異なりますので、よ~~く確認して下さい)
超長期の定期保険は終身保険に限りなく近づきます。
終身保険は「必ず受け取れる」保険ですと断定できます。しかし100歳定期保険(超長期)に加入して万一(変ないい方ですが・・)101歳まで生存した場合保険金を受け取れずにすべて掛け捨てで終了します。掛け捨てになる金額は桁外れの金額になる可能性があります。ここが終身保険との大きな違いです。よ~~く理解しておいて下さい。
長寿を喜べなくなります。
理論的には終身保険より保険料は安くなります。しかしよくさがせば超長期定期保険より安い終身保険もあります。
「終身保険より安く入れる。100歳までには死ぬだろう。」という考えでこの保険に加入しているとしたら安易に過ぎると考えるのは私だけでしょうか?
この長期平準定期保険は前述の高い貯蓄性(資産形成機能)を活用してこそ真価が発揮できる保険と考えるのが間違いはありません。
保険選びのヒント
保険活用のサンプル
保険料一覧(参考)