団体医療保険・団体所得補償保険・など・・団体保険とは

団体保険の話を始めると数十ページのコンテンツになります。今回は団体医療保険を中心に説明したいと思います。

金融庁が認可している団体の定義は非常に複雑で細かいので業界の方が見たら異議ありとなるかもしれませんが 大まかな所ではあっているはずですので、その点を考慮して読んで下さい。
また、生命保険会社、損害保険会社を区別していません。しかし団体保険の性格上、この分野では圧倒的に損害保険会社の方が強い ということに双方異論はないはずです。

団体契約とは、簡単に言えば、特定のグループに所属する複数の被保険者を、まとめて1つの保険契約として保険に加入する制度です。
保険料はグループが全被保険者分を払い、保険証券は1枚のみ(グループあてに)作成されます。原則として個々の被保険者には保険証券は発行されません。
保険会社から見れば、保険料を個々の被保険者から集金(収納)する手間が必要なくなります。個々の被保険者に対しての保険証券の発行費用が不必要になります。

保険期間も通常1年となります。つまり1年更新となります。

※「会社の団体で入っているけど保険証券はちゃんと手元に来ているよ」と言う方も多いのですが、それは「団体契約」ではなく「団体扱い」契約です。個人契約と同じと考えて間違いありません。

最も一般的なもので言えば、社員が1000人いる会社で、その従業員をまとめて保険に加入するといったものを言います。 組織であればどんなものでも(保険料の支払能力があるもの)団体として加入できます。 大学や高校のサッカー部が部員をまとめて傷害保険に加入するとか、旅行会社がそのお客さんを被保険者群として(団体旅行、主催者旅行)旅行保険に団体加入するとか、老人会が会員を被保険者群として傷害保険に団体加入するなどをいいます。ただし実態がなく、保険加入のみを目的に組織された団体は認められません。 以上の例は個人の団体ですが、団体は個人だけに限りません。組織の団体、事業者の団体などもあります。例えば経済同友会、建設業共同組合、醸造業組合、農業共同組合、日本医師会、税理士会、理容協同組合・・全日本私立幼稚園連合会・・、法人会、健康保険組合、病院会、日本商工会議所・・新聞記者クラブ・・きりがありません。すべての組織は組織を組んだ方がメリットがあると考え作られたものです。

前記の例で、社員が1000人いる会社で、その従業員をまとめて保険に加入するといった場合、保険の契約者は会社で、個々の従業員は被保険者という形を取ります。前述の様に保険会社から見れば、保険料を個々の被保険者から集金(収納)する手間が必要なくなり、個々の被保険者に対しての保険証証券の発行費用が不必要になりますので、契約者(会社)に対してはその分保険料を割引します。これがいわゆる団体割引というものです。 被保険者数が大きくなればなるほど割引が大きくなります。

保険料ってこんなに安くなるのかと驚くほどです。

多くの企業や団体がこの制度を活用しています。活用しない手はないと思います。

企業がその役職員を被保険者として団体保険に加入する目的は何でしょうか?
たとえば、従業員が死亡したときの死亡退職金の支払いのためであったり、労災上乗せ補償のためあったり、見舞金の支払いのためであったりします。 いわゆる福利厚生が目的となると思われます。
さて、私たちは知らず知らず自動的に団体に所属することがあります。たとえば大企業に入社すればおそらく自動的に労働組合に所属すことになり組合費が徴収されますよね(ユニオンショップ制度)あるいは社員の互助会などという組織もあるかもしれません。 また、子供が幼稚園に入園すれば自動的にPTAという組織のメンバーになり、全日本私立幼稚園PTA連合会のれっきとした会員になります。PTA会費を支払わなければなりません。
何か商売を始めると、その業界の組合に加入しないと商売ができないといったこともあります。弁護士であれば弁護士会に医師であれば医師会に所属していないと新たな情報の入手が困難になって仕事が進められなくなるかもしれません。また多くの助成金などはこういった組織経由で交付される事が多く、組織に所属していないと助成金などが受けられないこともあります。
こういった組織でも団体保険を取り扱う事ができます。これらの団体保険の多くはその組織が保険料を負担する全員加入のものではなく、希望者のみが自ら保険料を負担し、加入できる制度になっています。希望者だけが加入する方式を任意加入の団体、一部加入の団体などといいます。この場合であっても保険料の取りまとめは団体が行いまとめて保険会社に支払うことで団体保険を構成することができます。当然団体割引の対象になります。(この場合でも保険証券は団体宛のものが1枚のみ作成されます。)
中小企業が任意加入の団体保険のしくみを作れば、企業が保険料を負担しなくても立派な社員の福利厚生制度になります。その際加入者に保険料の一部を補助したりすればさらに立派な福利厚生制度になります。


団体のメリット 団体のデメリット

■個人で加入するより保険料が安くなる。

10,000人を越えるような大きな団体になると 保険会社や保険商品によって微妙に異なりますが、通常の半額(50%引き)などになったりします

■個人では加入できない保険に加入できたりします。

難しい話になりますが、小さな補償の契約ができるようになったりします。
どういうことかというと、例えば個人だと最低5口以上はいらなければ契約できない保険があったとすると 団体加入では2口から加入できるといった感じです。
これにより他の保険との組み合わせを考えて効率よく保険加入ができるようになります。
団体保険と通常の個人保険を組み合わせて保険料の軽減を図ったり、貯蓄率を高めたり、保険加入の選択肢が広がります。

■個人向けには販売していない保険や加入条件で加入できたりします。

団体医療保険や団体ガン保険などはもともと団体向けに開発された商品です(開発当時、生保と損保の第3分野商品の競合を避けるため一部として特別に認可取得を認められた商品だったが、今では それが却って損保の売りになってしまった商品)個人向けには販売されていない。
告知が簡単であったり、被保険者面談が不要だったりする。被保険者の意向確認も省略されたり、専用の特約もあったりします。

■大口優良割引という特別な割引が使えたりします。

契約者の公平の原則を無視したような割引がまかりとおっています。

■その団体に加入しなければなりません。

掛け金の他に入会金や会費や組合費などが必要になることが一般的です。したがってこの分も考慮する必要が出てきます。

■その団体のルールに従わなければなりません。

団体自身の規約や取り決めに従う必要が出てきます。保険料の集金方法は通常その団体の取り決めた方法となります。
募集(加入)のタイミングも会の取り決めになります。いつでも加入できる個人契約とは当然考え方の土俵が異なります。

■保険会社から積極的に勧誘されることはありません。自分から積極的に加入しなければなりません。

これは、自分で探したい人にはメリットかもしれませんが…。保険会社からみたら、通常の保険料で加入してくれる個人加入者や法人加入者を 集めることが最優先になります。団体には募集コストをかけれないので、営業などしたら赤字になってしまいます。 その団体の主催者が募集の役割を担うことになります。したがって通常パンフレットやチラシだけの募集になってしまうケースが多いため、 あなたが、気が付かなければそのまま加入のチャンスを逃すことになります。

■団体を脱退すれば、保険料は通常のものになってしまいます。

団体を脱退すれば、保険料は通常のものになります。または団体契約を前提に開発された保険であれば、それに変わる保険は無いということもあります。

企業の社員団体などは、定年などで社員でなくなってしまったらどうなるのかをしっかり頭に入れておく必要があります。

実例をいくつかご紹介します。保険料や条件は毎年微妙に変動しています(割引率が加入人数や損害率によって変動するため)。利用する場合は各主催団体に確認をしてください。

日立グループ社員団体医療保険

引受:損保ジャパン
病気・けがで入院1日につき5,000円(5口)、1入院限度60日、1泊2日から、手術給付金10,20,40倍 月払い保険料(単位円)
日立グループ団体医療保険保険料表
※通院特約、先進医療特約などオプションあり。定年退職後も80歳まで更新可能

丸紅社員団体医療保険

引受:損保ジャパン
病気・けがで入院1日につき5,000円(5口)、1入院限度60日、1泊2日から、手術給付金10,20,40倍 月払い保険料(単位円)
丸紅社員団体医療保険保険料表
※通院特約、先進医療特約などオプションあり。定年退職後も80歳まで更新可能

全国商工会議所
団体休業補償プラン

引受:東京海上日動火災
団体所得補償保険。病気・ケガで就業不能になった時の補償。有職者が対象だが主婦でも加入できる。
下記保険料は免責期間7日、てんぽ期間1年、月額補償15万円 月払い保険料(単位円)
全国商工会議所団体休業補償プラン保険料表
※入院一時金などのオプション有り。保険料とは別に会費が必要。

育英若葉会
団体入院見舞金制度

引受:少額短期
入院見舞金制度:病気でもケガでも1日の入院で50,000円受け取れる。
育英若葉会見舞金表
加入年齢15歳〜64歳、1年更新、年会費は一律
【支払例】
■インフルエンザをこじらせて1日入院した
上表の1泊2日〜5泊6日の入院に該当するので、50,000円が受け取れる。
■胆石をこじらせて10日入院した
上表の1泊2日〜5泊6日の入院と6泊7日〜12泊13日の入院に該当するので、50,000円+50,000円で100,000円が受け取れる。
その他詳細は、HP参照→社団法人育英若葉会

本来保険制度には公平の原則という崇高な理念がありますが、団体のしくみは、ある意味すごく不公平な仕組みといえます。おそらくこの様な不公平な制度が認められた最初は「公務員」向けに開発された制度だったのではないかと推測します。 あくまで推測ですので誤解のないようにして下さい。

当時安い給料だった公務員の方達が安く保険に加入する制度として考えられたものではないかと思うのです。たとえば保険会社を監督していた当時の「○○省」などが手前味噌に「財務省職員団体」などを考えて・・・理屈は後から考えた? 現に現在でも最も多い団体は公務員向けのものでまちがいないでしょう。それが民間の団体に広がって行ったものと考えられます。

上記の例では、日立さんと丸紅さんを書きましたが、公務員向けの団体商品をググればいっぱい出てきます。

話は変わりますが、皆さんは自動車保険に安く入るには通販しかないと思っていませんか?例えば「東京海上」や「損保ジャパン」といった保険会社は通販の商品は扱っていませんから保険料は高いとお考えでしたら大間違いです。これらの 保険会社は特定の団体には通販より安い自動車保険を販売しています。トヨタグループやパナソニックグループあるいは公務員といった巨大団体向けには通販以下の安い保険料で 自動車保険を募集しているはずです。

話を戻します。今では広く利用されるようになった団体保険です。制度がある以上正々堂々と活用しない手はないと思います。

いきなり大会社の社員にはなれませんが、商工会議所の団体や上記の若葉会のような地域団体、小団体なら結構あります。医療保険の様なものはこれらのものでも利用価値はとても大きいと思うのですが・・。皆さんはどのように考えるでしょうか?